もう戻れない

心霊かどうか自信がないという前置きの話。

高校の頃のA男は、ハッキリ言ってバカだった。

一応ちゃんと受験に合格して高校に入ったけど、2か月そこらでなぜか勉強についていけなかった。

中学で習ったものも出て来るのに、なぜかすっかり忘れてしまい、自分でもなぜこんなに頭に入ってこないのか困るほどだった。

仲良くなったB男は

 『受験が終わってホッとしたんだよ』

と言ってくれるが、B男の成績はほぼトップ。

C男は

 『受験だけがんばっちゃったって奴じゃない?』

という、成績は中間くらい。

 『実は俺もそうなんだよな〜』

というD男は、A男と底辺を争っている。

夏休みが終わってテストが始まった頃、A男は、常に成績トップを守っているKが、授業を聞いてないことに気付いた。

顎に手を置いて外を見ているか、ボーっとしているかで1日過ごす。

 『きっと優秀な先生がいる塾に行ってるに違いない』

と跡を追ってみても、Kは真っすぐに帰宅して家から出てこない。

何日も様子を見たが毎日同じで、

 『だったらきっと、特別な勉強方法があるんだ!』

と思ったA男は、ある日の昼休みにサンドイッチとコーヒー牛乳を賄賂にし

 『頼む! Kの勉強方法を教えてくれ!』

と頼み込んだ。

いつも1人でいたKはビックリし、BCDもA男の行動にビックリ。

でも確かに、Kは授業も聞かずボーっとしているのにトップをキープしているわけだから、3人だって興味はある。

特にB男はKをライバル視しており、どうしても成績が抜けないことを愚痴っていた。

A男は毎日パンと牛乳などを献上するが、どうしても教えてくれない。

それでも!と2週間続けたところ、ついに

 『分ったよ、A男君の熱意には負けたよ』

と教えてくれることになった。

これにBCDも便乗したところ、Kは

 『御礼とか別にいいけど。

でも、自分はお誕生会というものを一度もされたことがないんだ。

後10日で俺は誕生日なんだけど、その時俺の家でお誕生会してくれないか?

それを条件ってことで、どうかな?』

と提案してきた。

もちろん!と4人は答え、お誕生会のために色々考えたそうだ。

で、その当日、それぞれ家には友人の誕生日だと伝え、4人で金を出し合ってケーキを買い、プレゼントを買ってKの家に行った。

迎えてくれたK母はとても美人で、K父は渋い感じ、Kの姉はセクシーだった。

K家族も

 『息子が友達連れてくるのは初めて! ゆっくりしていってね!』

と色々と差し入れてくれる。

男5人じゃ色気もないけど、無事にお誕生会は終わり、Kはプレゼントに感激してくれた。

 『それまでお誕生会がなかったって、嘘だろ?』

と言うと、

 『俺んち転勤族で、1年くらいで引っ越してたんだよ。

だから、この年になるまで友達とお誕生会をしたことなくってさ。』

とKは笑った。

 『だから今日は生まれて初めてのお誕生会だったんだ。

こんなに楽しいって思ったのも久しぶりだよ。

みんな、ありがとう。』

4人は泣きそうになった。

 『そんなもん! いつだってしてやるよ!』

 『なんでもっと早く言わなかったんだよ!』

都合がいいかもしれないが、この時は本当にそう思ったそうだ。

 『だから、そのお礼に俺の秘密を教えるよ。』

4人は一気に静かになった。

 『といっても、実は何もしていないんだ』

Kの話はこうだった。

父親の転勤で学校をしょっちゅう変わってたKは、当たり前だが成績は良くない。

このままじゃ大学どころか高校だって怪しいと言われるほどだった。

それでも姉は大学に行っているわけだし、自分の頑張りが足りないと思っていた。

ここに引っ越してくる前に住んでいた場所でのこと。

KにはOという友人が出来た。

で、このOが都市伝説大好きで、KはOの家でよくそんな本を読んでいた。

そんなある日、OはKに

 『3〜4日家を出られないか?』

と聞いて来る。

某パワースポットに行きたいのだが、自転車では日帰りは出来ないと。

かといって1人で泊りは親が怒る。

そっち方面には観光地があり、Oの親戚もいることから、友人と行くと言えば親も了承するだろうと。

Kは無理かもと言ったが、親は意外とOKを出し、新しい自転車まで買ってくれた。

OとKの親は電話で話をして互いに了承し、Kは生まれて初めて友人と自転車旅行に行けることになった。

で、パワースポットに行くと思っていたら、ホラーも好きだったOは廃墟だの廃病院だのと心霊スポットにも連れて行く。

でもKも段々嬉しくなり、Oとあっちこっち行ったそうだ。

その日はO親戚宅に泊まるという日中の事。

Oの勘違いで心霊スポットでもない道に入ってしまった。

もうしばらく行こうと進んで20分後、行き止まりになってしまった。

でも、その目の前の建物が妙だったそうだ。

 『ここもそうかもしれない、入ってみよう』

人はいないのはすぐに分かったが、心霊スポットと言うにはあまりにもキレイ。

きっと事情があって放棄されたばかりだろうと、裏口から侵入したそうだ。

入った時からブーーーーーンという音に気付いていた。

きっとどこかで機械が動いているんだろうと思ってた。

でも、建物内を歩くうち、その音が段々大きなっていく。

そして2階の奥の部屋に来た時、その音はその部屋から聞こえていると分かった。

2人は入ろうとドアノブを回したが、鍵が掛かっているみたいで開かない。

諦めて上の階に行こうとし、Kはもう1回だけとドアノブを回したらあっさりと開いて、勢いで中に入ってしまった。

そこで見たのは、山ほど積み上げられたコンピューターだったそうだ。

その全てに電気が付いており、確かにそれらは動いていた。

裏口から入った時から聞こえていた音は、間違いなくこの部屋の音だった。

太い何本ものケーブルに、何かを計算しているかのようなチカチカ光るライト。

カチャカチャと音を立てる何かとか、がーがーと音を立てる何か。

それらを『すげぇ・・・』と見上げていると、ブーーーンという音が頭の中に入り込んだ気がしてすごく不快になったそうだ。

Kが気付いたら、病院で寝ていた。

横には泣いているOと、心配そうに見ているOの親戚。

明日にはK両親も迎えに来ると言われ、Kは

 『旅行も終わりか・・・』

と残念に思った。

体的には何事もなく連休明けから学校に行ったら、Oから

 『お前、あの部屋の前に倒れていたんだぞ!

全然目を覚まさないから・・・俺心配で・・・』

と泣かれた。

悪いことをしたと思ったそうだ。

ただその後から、どんな本を読んでも、どんな授業を受けても、すんなり頭に入ってくるようになっていた。

とても覚えられなかった英語の授業も、なぜかあっさりと話すことが出来た。

簡単な会話しか出来なかったのに、1週間後には外人の先生と英語で話せた。

自分でもビックリだったそうだ。

数学も歴史も同じで、教科書を見てもちんぷんかんぷんだったのに、なぜか頭の中では計算が出来ている。

計算が出来過ぎて文字に書くのが遅れるほどだったそうだ。

資格の本を読んでも理解が出来るんで、試しに某国家試験を受けてみたら合格。

この頃は覚えることが嬉しくて、両親に頼んで色んなジャンルの本を買ってもらったそうだ。

でもそうなると、授業がつまらない。

逆に頭に入って来なくなってしまう。

とっくに高校レベルなど超えてしまったんだと言う。

 『・・・俺、高校卒業レベルの勉強はもう終わってるんだ。

実を言うと、この高校を卒業したら、俺イギリスの大学に行くことがもう決まってるんだ。』

と、Kは笑いながらその日までの成績表を見せてくれた。

それは確かに2学期の中間テストまでは底辺をウロウロしていたのに、期末テストはトップという成績。

唯一悪かったのは、走るのが苦手な体育だけという優秀さだった。

  『だから何もしてないんだ。

でもそれじゃお前らは納得しないだろ?

だから思い出しながら地図を書いたよ。

行ける機会があったら行ってみればいい。』

メチャクチャ詳しく書かれた4枚の地図を貰い、夜も遅いんで4人は帰った。

帰ってすぐ、C男から電話があった。

今調べたら近くまでバスが通っている、次の連休で2人も誘って行ってみないかと。

 『A男はB男に連絡してくれ。 俺はD男に連絡するから。』

でもB男は行かないと言う。

 『どうしたよ! 4人で行こうぜ!』

と言っても、B男は頑なだった。

翌日、3人はB男が来るのを待ったが、B男は学校に来なかったそうだ。

先生は風邪だと言った。

そういえば昨夜は少し冷えたもんなと3人は思った。

昼休みはKも誘って4人で飯を食い、

 『次の連休で行ってくるわ』

と告げた。

しかし、その翌日も翌日も、B男は学校に来なかった。

先生は相変わらず風邪だと言った。

3人は心配したが、Kだけは平然としていた。

B男不在のまま中間テストが終わった頃、B男と同じ中学の奴が

 『B男は行方不明かもしれない』

と、不穏なことを言った。

どういうことかと聞くと、そいつはB男と中学からの付き合いで、それまででもこんなに休んだことはないと言う。

かなり酷いんだろうと母親に見舞いに行くと言うと、

 『B男君は行方不明だから、行っても会えない』

と返されたそうだ。

相変わらずB男は戻らず、逆にKとは仲良くなった。

で、ついに連休がやって来た。

Kは年末まで休んでイギリスに行くと言い、帰っても会えないのが寂しいと感じたが、とにかく今は目的地に行くことが優先。

確かにこれは楽しいと、3人はあっちこっちから借りたキャンプ道具を持ち、折りたたみ自転車を持って出かけて行った。

Kの地図は合っていた。

地図通りに行くと、あっさりとその場所についた。

親切にも、Kは裏口の場所まで書いており、3人は荷物を隠してこれまたあっさりと建物内に入ることが出来た。

確かに誰も来ていないらしく、廃墟だろうが建物内はとても綺麗だった。

Kの言う通り、ずっとブーーーーーーーンという音が響く。

 『確か・・・2階だったな・・・』

と誰かが言った。

3人で2階に上がったら、奥から音が大きくなっていた。

ここでC男が言った。

 『1人ずつ行ってみないか?

Kの時はOって奴がいたから助けられたんだろ?

3人共入ってしまったら、誰が助けるんだよ。

それにKは鍵がかかってたって言ったろ?

でも1人でドアノブを回してドアは開いたって言ったじゃん。』

確かにそうだった。

静かにじゃんけんして、先にD男が向かって行った。

D男は一旦ドアノブを回して通り過ぎ、引き返してドアノブを回したら、ドアが開いた。

 『C男の推理通りだ・・・』

と思っていたら、C男が突然走り出した。

そして部屋の中に入り

 『悪いな!』

とドアを閉めてしまった。

残された2人は呆気に取られた。

と、ここでアラームが鳴った。

このアラームは予約している宿のチェックインの時間を知らせるものだった。

2人はドアを叩き

 『おい! D男! 出て来いよ! 宿に行く時間だぞ!』

とさんざん怒鳴ったが、ドアは開かないわ返事はないわで困ってしまった。

1時間以上もそうしただろうか。

D男からの返事はない。

2人は相談し

 『もしかしたら中で失神しているのかも。

Oの話だと、部屋の前で倒れていたって言ってたし。

だったら今は宿に帰って明日くれば、部屋の前にいるんじゃないか?

それでダメなら警察に連絡しよう。』

と決めて、とりあえず宿に向かった。

宿で1人遅れると告げ、夕飯を食べて風呂に入り

 『明日、部屋の前にいるといいな』

と言ってその日は寝た。

翌日、朝食を知らせる電話が鳴って飛び起きたら、D男の携帯にC男からメールが入っていた。

あわてて電話したらC男の母で、C男は昨夜帰宅した。

喧嘩でもした?と聞かれた。

まさか事情が話せないD男は、

 『些細なことで口論をしてしまった』

と答えた。

 『仕方のない子ね〜、うちのは心配せず楽しんでらっしゃい』

と言われ、一先ず安心。

 『心配かけやがって!』

と2人は朝食を取り、あの建物に向かったそうだ。

だが、ここで2人は不信に思った。

 『C男はどうやって家に帰ったんだ?』

そこにはC男の自転車とキャンプ道具がそのままで、背負っていたリュックだけが無かったんだと言う。

あの時間じゃバスも間に合うかどうか、というか、そんな時間では電車だって怪しいのに、どうやって家に帰ったのか。

 『とりあえず、中に入ろう・・・』

2人は中に入り、2階に上がっていった。

奥の部屋に向かいドアの前に立つ。

 『今度は俺が回すよ・・・。』

ドアはあっさりと開いた。

この時、A男はブーーーンという音に巻き込まれる感じがし、思わずD男の腕を掴んでしまい、D男も中に入ってしまった。

ドアは内側からも開かなくなっていた。

見上げると、Kの言った通り、天井まで黒い機械が積み上げられており、あっちこっち電気が付いて色々な音が聞こえた。

 『何を計算してるんだろう・・・すげぇな・・・』

この時、A男は目の前が真っ白になり、上下左右が分からなくなった。

目の前には行方不明かと言われているB男がいた。

B男はこっちに気付いておらず、部屋の中に立っていた。

B男はコンピューターを見上げていたが、しばらくすると、1つの機械に手を出して、何かのスイッチを触っていた。

 『おい! 勝手に触っちゃ・・・』

と手を伸ばしたが、B男には届かない。

B男は構わずに手を伸ばして弄っていたが、突然足元の太いケーブルが蛇のように動き始め、あっという間にB男を捕まえた。

B男は激しく抵抗したが、色とりどりのライトは一斉に真っ赤になり、それはまるで怒っているかのようにも見えたんだそうだ。

 『やめろ! やめろ!』

と叫ぶB男の抵抗も空しく、B男は何本ものパイプによってコンピューターの裏側に運ばれて行った。

 『おい! B男! どこに行くんだ!』

と叫んだが、急に目の前が真っ白になり、気付いたらD男が目の前にいた。

 『あれ? ここは?』

 『俺たちは2人共、部屋の前で倒れていたんだ』

 『B男を見たよ・・・』

 『俺は見なかった・・・』

A男は立ち上がってドアノブを回したが、やはり鍵が掛かっていた。

この日はキャンプ場だったんで、2人はC男の自転車とキャンプ道具を背負い、キャンプ場に向かい夕飯の準備をした。

夕飯を食べながら2人は話した。

2人が見たものはほとんど同じで、D男は機械を見上げている時、不思議な音がした機械に向かって一歩踏み出した時、ケーブルを踏んでしまった。

兄弟が多いD男は、ついいつものクセで

 『あ! ごめんね!』

とケーブルを撫でたそうだ。

そしたら、その不思議な音が懐かしい何かの音に聞こえ、つい目を閉じて聞き入っていたら、気付いたら部屋の外だった。

その時はもうA男は倒れていたそうだ。

A男はB男を見たことを話し、ケーブルが蛇のように動いてB男を捕まえて機械の裏に入って行ったと言った。

 『もしかしたらB男はもう戻ってこないかもしれないな・・・』

が2人の意見だった。

それなりに楽しい旅行も終わり、C男の荷物を持ってC男宅に返しに行ったら、C男はごく普通に家から出て来た。

 『あぁ悪いな・・・』

と、C男は熱があるかのような顔をしていた。

 『じゃあ明日学校でな!』

とD男と別れて帰宅したA男は、何か変わってないかと教科書を見たが、特に変化はない。

 『まぁ・・・そうそう上手くいくわけないよな・・・』

と、暇つぶしにパソコンを開いたA男は、フとあることに気付いた。

それは滅多に入らないが、容量を喰らう悪質なものがたまに入り込む時がある。

いつもは姉を呼んで撃退してもらうのだが、その時A男はいつの間に自分で処理をしていたのだ。

 『俺・・・こんなにパソコン詳しかったっけ?』

と思うほど、あの難しい横文字の意味が分かる。

 『まさか!』

と思ったA男は、買ってもらってから2〜3度しか開いたことがないコントロールパネルなどを開いてみたら、どれも全部理解できることが分かったそうだ。

A男はその夜、学校の時間も忘れるほどパソコンを弄っていた。

朝、眠い目をこすって学校に行くと、D男が走ってやってきた。

昨日、教科書を見ても変化が無かったが、もしやと思って資格の本を読んだら全部理解できたと言う。

 『知らない用語だっていっぱいあるのに、全部理解できたんだよ!』

A男も、ネットで動画を見るかメールしかしないのに、パソコンの全てが理解できたと話した。

 『人によって理解の度合いが違うのかもしれない』

という結論に達した。

で、その日の授業でのこと。

先生の話を聞きながら黒板を見ていた2人は唖然とした。

何もかも分かるようになっていた。

Kほどの速度ではないが、A男はネットに特化し、D男は資格に特化した。

だがこうなると、C男はどうなんだろうと思い始めた。

C男は休んでいるんで、本当に熱でも出したかと思うのだが、C男だってあの部屋に入っているし、行方不明になったわけじゃない。

2人はその帰り、ちょっと遠いC男の家に向かった。

出て来たC男は

 『本当に済まなかった』

と謝りつつ、見たものを話した。

部屋に入ったC男は、入りさえすればKのように天才になれると思ったのだが、入ったとたん、怖いと思ってしまったそうだ。

C男は昔かくれんぼでどこかに閉じ込められたことがあり、以来圧迫感のあるものが怖いらしい。

天井まで届くような機械を見て、

 『早く出たい』

と強く思ったそうだ。

で、気付いたら、地元の駅前のベンチに座っていた・・・と。

 『何か変化はあったか?』

 『・・・体の調子が良くなった・・・』

C男は黙っていたが、実は持病を持っていた。

定期的に病院に行っていたが、その持病が消えていたんだと言う。

医師も親も『まさか!』と思うほど、綺麗に治っていたそうだ。

自分でも理解できず、学校を休んで病院でさらに詳しい検査を受ける予定だと。

 『俺さ・・・B男はもう戻らないと思うんだよ。

帰りたいと強く思った時、少しだけB男が見えた気がしたんだ。

あの巨大なコンピューターの裏で、たくさんのケーブルに体中を突き刺されたような感じで、生きているか死んでいるか分からないB男を見た気がした』

3人は思った。

きっとB男は連休前に学校を休んで行ったに違いない。

B男は何をどうしてもKを抜けないことを恨んでさえいた。

Kは全部が理解できるし、その気になれば全教科100点も取れると言ったが、あれこれ言われるのが嫌で少し手を抜いていると言っていたからだ。

Kを超えたいB男にとって、それはきっと屈辱だったことだろう。

しかし、その部屋に入ったB男は、きっと触れてはいけない何かに触れ、その部屋の主の逆鱗に触れてしまったんじゃないか。

そして機械の一部として取り込まれたんじゃないか。

そんな気がしたそうだ。

年末になってKが戻り、3人はKに感謝と報告に行った。

 『そういうことがあったんだ』

とKは感心していた。

でも3人は、B男の事だけは言えなかった。

B男が先に行ったというのも予想に過ぎないし、別の事情がある可能性もある。

余計なことは言わないようにしようと話し合った。

年が明けて3学期が始まると、A男とD男の成績は上がっていった。

A男は2台目のパソコンを買ってもらい、自分で自作できるほどに理解をしていたし、D男は3年から受けられるだけの資格にチャレンジすると意気込んでいる。

そして3年生に上がった時、KとA男とD男は学校でも有名になっていた。

又、C男は陸上部に入り、あっという間にレギュラーに選ばれたそうだ。

そして3年生の夏、一足早くKはイギリスに向かった。

で、その夏も半分くらい経った頃、B男が家に戻っていると話を聞いた。

夏休みの後半、3人はB男に会いに行った。

母親は躊躇ったが、B男がいいと言ったんでB男の部屋に入った。

B男は一切の視力を失っていた。

だが、その代わり、人の近い未来が見えると言う。

 『俺はKのようになりたかった。

努力しなくても世界的に有名な大学に行けるなんていいじゃないか。

だから、俺は学校を休んで先に行ったんだよ。

・・・で、あの部屋に入った。

でも俺はあいつを怒らせてしまったんだよ。』

 『あいつは・・・あの部屋にあったものは、あれ自体が生命体なんだ。

あれは1つの生き物なんだよ。

入った程度じゃあいつは怒ったりしない。

でも余計なことをすれば、そりゃ怒るよな。

なんで俺たちが入ることが出来たのかは知らないが、あいつに取り込まれている時に、少しだけ思考が分かったよ。

あの部屋に入ったものは、あいつの子機になるんだ。

そして役割を与えられる。

これはテストなんだよ。』

 『Kは将来、有名な学者になるだろう。

A男、お前は〇〇大学の〜〜という部に入れ。

C男は運動で有名な大学に行け。

D男は医者になれるから、医者の大学に行け。』

 『あと、絶対に嘘はつくな。

誰かを助けるような誤魔化しくらいなら許されるけど、嘘は絶対に付くな。

機械は嘘を付かないから、嘘は許さないぞ。

あいつはいつでも俺達を見ているし、思考も分かる。

・・・これ以上話すと、俺は又何かを失うだろう。

もう行ってくれ、これ以上は何も話せない・・・。』

 『もう一度言うぞ、絶対に嘘はつくなよ。

あいつと関わった以上、もう元には戻れないからな。』

Kはごく普通に大学に行き、そのまま大学に居続けて何かの研究を進めており、パソコンでチャットする付き合いになった。

〇〇大学に行けと言われたA男は実際に合格し、B男が言った部に入ったら、翌年にA男の提案で某全国大会で優勝した。

そのまま卒業の予定だったが、今現在アメリカの国家機関にいるそうだ。

D男は医師になり、海外に行く医師団に入っている。

それぞれが自分の意思などもあるが、きっとこれらもあいつの意志通りなんだろうと思っている。

ちなみにC男はB男の言った通りの大学に行ったが、大会前に飲酒喫煙し、それがバレそうになったら後輩を盾にして嘘を付いた。

大会直前、C男は単独で事故を起こし、やはり両目を失ったと言う。

そしてB男は、どこかの深夜番組で“未来が見える男”として出ていた気がするが、それっきり姿が見えないと。

B男は司会者の人に日本の未来を尋ねられたらしいが、その時のB男の返事は

 『自分が最後に見るのは、真っ白な光のようなものがたくさん落ちて来るというものだ。

人々の悲鳴が聞こえ、大地は揺れ、町は火で覆われる。

自分は逃げることが出来ず、その炎で死ぬだろう。』

と予言めいたものだったそうだ。

その意味は分からないまま、それがいつかも分からないまま。

それ以降、B男がどこでどうしているか分からないんだと言う。